授業の導入
椿 仁三千 先生
松戸市立松戸高等学校
体育館でカタリ場を初めて受けた時、十分に研修され、熱い思いを語るスタッフやキャストの皆さんに、今までに経験したことのないものを感じました。生徒達が、年齢の近い先輩や手の届く目標に出会うことは、とても意味があります。先輩の話を聞き、友人の話を聞き、自分を語る。それにより、実は皆が自分と同じような悩みを抱えており、同じような壁を乗り越えて前に進んでいることに気付きます。それは生徒たちの大きな一歩に繋がります。これこそが「ナナメの関係」でしか得られない体験なのかもしれません。授業の終了後にいっぱいの笑顔で体育館を後にする生徒たちを見ると、胸の中に熱い物がこみ上げて来ます。いつもカタリ場は、進路は山の頂きを目指すばかりでなく、広がって行く物である事を気づかせてくれます。多様化する教育現場は今までの指導だけでは行き届かないことがたくさん存在します。これからは学校現場だけでなく、企業、地域、NPOなど様々な分野で子どもたちの教育を支えていただく必要があるのです。カタリバの皆さんには、これからも現場に新鮮な風を吹かせていただきたいと思います。
佐野 和之 先生
かえつ有明中・高等学校(実施時は、西武学園文理中学・高等学校)
多くの生徒は「夢の種」「志の種」をすでに持っている。ただ、それに気づけていなかったり、それを夢にして良いのか不安だったり、どのようにして大きく膨らますのかわからなかったりするだけ。そんな彼らに必要なのは、一方的な教授や的確なアドバイスではなく、同じように不安を感じながらも必死に前に進もうとあがいているちょっと先行く先輩の姿。その姿に生徒達は勇気をもらい、自身の力で進み始めようとする。「カタリ場」の方々には、そんなちょっと先行く先輩の姿を求めた。キャストの方々に、上手に「伝える」ことは期待していない。むしろ、うまく出来なくても、この授業のために考え抜いた想いがにじみ出て、自然とその想いが「伝わる」ことを期待している。実際、カタリ場体験後、東北の高校生と交流を図る者、海外に出る者、行動は様々だが、自身の力で前に歩み始める生徒が多くいた。今後も不器用な、しかし、「伝わる」カタリ場に期待している。
宮崎 多美子 先生
東京都立若葉総合高等学校
本校では開設2年目から、プログラムを利用しています。8年目を迎えるなか、学校事情により、従来通りでは継続できない可能性が出てきました。カタリ場の必然性や効果を、今まで以上に明らかにする。そのために考えたのは、総合的な学習の時間「課題研究」のテーマ決めを、カタリ場に組み込むとことでした。「未来の自分のこと」や、「身の回りの社会を考えるきっかけ」という、この授業のテーマで大事なのは、われわれ教師にはない「ナナメの関係」「年の近い先輩」「現在進行形である卒業論文作成の経験」。これらを生かし、直接関わってもらうことでした。綿密な打ち合わせやワークシートの作成、動きの準備など、スタッフは相当大変だったと思います。それでも、学生リーダーとの打ち合わせ内容が約50名のスタッフに伝わり、リーダーと同じような認識と熱意を持って生徒と接していたことが印象的でした。さらに終了後、生徒の一人一人のモチベーションやテーマへの納得度、引き継ぎ事項が詳しく書かれていました。その甲斐あって終了後、授業がスムーズに進んだのはもちろん、生徒のアンケートでは、テーマ決めと授業の満足度が高い数値が出ました。これからもカタリ場と生徒の関係を考えながら、生徒の将来にいい影響を与えられるようにできたらと思います。