授業の導入

導入事例:横浜市立横浜商業高等学校

「カタリ場」「リーダー育成プログラム」を導入いただいている、横浜市立横浜商業高等学校の青木恒夫先生(主幹教諭)に、導入前の課題や実施時の様子、授業後の生徒の変化などをお伺いしました。

「プレゼンテーション力と論理的思考力が、鍛えられた」

「プレゼンテーション力と論理的思考力が、鍛えられた」

主幹教諭 青木恒夫先生(左)と
カタリバ担当者 山崎菜々美

学校名
横浜市立横浜商業高等学校
所在地
神奈川県横浜市
創立年
1882年
課程
全日制課程
設置学科
商業科、国際学科、スポーツマネジメント科
導入プログラム
カタリ場、リーダーシップ育成
対象学年
高校1年生、2年生
実施時期
2014~15年度

Q.導入前の課題は?

A.本校の商業科「YBCクラス」は、ビジネスシーンをリードする人材の育成を目的にしています。大学進学を前提にしたレベルの高い授業を受けるとともに、幅広い教養とビジネスの専門スキルも習得します。企業や大学との連携プログラムや予備校の特別講座など、生徒たちの眠れる成長スイッチを押すべく、さまざまな取り組みをしています。

生徒たちは1年生の時からさまざまなプログラムを受け、たくさんの課題もこなしてきているので、2年生になると突然3000字のレポート提出等の宿題を出しても、特に文句も言わずにきちんと取り組むようになってくるんですよね(笑)部活にも学校生活にも行事にも、基本的には前向きに取り組んでいます。 ただ、高校2年生になり、秋も深まってくるとだんだん受験が迫ってきて、「受験イヤだな~」と、少し憂鬱で暗い雰囲気になってきてしまいます。そこを「もう少し変えたいな」と思っていました。

Q.カタリバに相談した理由は?

A.もともとカタリバとは、元副代表の方がいらっしゃって知ったんですね。お話をいただいて、それで「一回やってみるか」という話になりました。「カタリ場」プログラムを実施してもらったのですが、正直、思ったような成果が上がらなかったんですよ(笑)

「カタリ場」プログラムはモチベーションが下がっている子たちには効果的ですが、もともとモチベーションの高い本校の生徒たちには、狙った効果があまり出なかった。私たち教員側のねらいと、カタリバの得意とする型が違ったんですね。

でも、カタリ場をやっている大学生がすごく前向きでポジティブだったので、「生徒たちをこういう風にしたい!」と思っていました。ご担当の山崎さんには、「実施費用がちょっと高すぎるのでは?」といったかなりぶっちゃけた話もしながら、「どうしたら、本校の生徒にとってもっと良い授業になるのか?」を語り合ってきました。
そのなかで、カタリ場を生徒に受けさせる狙いは、生徒に「こういう人になりたい!」と思わせることなので、それならば、「生徒を、『こういう人になりたい!』と思われる人にしてしまえばいいじゃないか!」と逆転の発想が生まれました。このように協働しながらできたのが、「リーダーシップ育成」プログラムでした。

Q.授業当日の様子は?

A.このプログラムでは、2年生約40名にカタリ場の「先輩役」になってもらうため、50分間×9コマの研修を受けてもらいました。そのうえで、最後に1年生約40名を対象に、カタリ場を行ってもらいました。「課題研究」という、普通高校の「総合的な学習の時間」のような位置づけの枠で時間をとりました。
導入にあたっては、「元気はつらつ!オロナミンC」になってほしいというのが、一番単純な期待でした。受験を前にすると、何事も暗くなっていってしまう。先生たちとの会話も、全部受験になってしまいます。そうではなくて、明るく元気に、前向きに受験を乗り越えていってほしいと思っていました。

授業を受けた2年生も1年生も、すごくいい目をしていました。2年生は、今まで作りこんできたプレゼンテーションを下級生の前で発表したのですが、達成感が満ち溢れていて、「やりきった!」という雰囲気でした。今もカタリバのことを話すと、「あ~、カタリバ懐かしいよね!」「うちら頑張ったよね!!」といい思い出になっているようです。
2年生たちは「先輩」っぽく、1年生をリードしていましたし、1年生も2年生の姿を見て「先輩すごいな!」と憧れを抱いた生徒もいたと思います。また、「来年は自分たちが先輩たちみたいに発表をするんだ」という気持ちで楽しみにしていた子もいました。見ていた先生方も、全員口をそろえて「すごくいいね!」とこのプログラムを褒めてくれていたのは、やっぱり良かった証拠だと思います。

Q.授業当日の様子は?

A.1年生も2年生も授業に対する態度が良くなったと感じています。(もしかしたら学年が変わったという影響も、あるかもしれませんが。)特に1年生は、課題も多く厳しい授業が多い「YBC」コースに来てしまって、少し後悔していた生徒もいたようでした(笑)授業で先輩たちが「YBCで良かった!」とかっこ良く語る姿を見て、「ここで頑張れば、あんな風になれるのかもしれない!」と将来に対して希望を持ったのではないか、と感じます。

また、その前年に実施したカタリ場の授業を振り返って、「1年生の時のカタリ場がきっかけとなって、自分と家族と向き合った」と話していた生徒もいました。彼女は、2年生の時に受けたリーダーシップ育成プログラムでは、「サンプリング」(=自分の人生を振り返っての体験談を、後輩に伝えるプレゼンテーション)を作って1年生の前で良い発表してくれました。「あまり効果がなかった」と思っていたカタリ場も、当時の1年生にしっかりと響いていたことが分かって嬉しかったです。

能力の面で言うと、プレゼンテーション能力が身に付くというのは大きいと思っています。リーダーシップ育成プログラムが終わった後、3年生のときにプレゼンテーションの授業があるのですが、やはり「がらっと」変わります。恥ずかしがらなくなります。一番話したくないことをカタリ場で話しているので、人前で話すことが嫌じゃなくなっているんですよ。
生徒たちには、気持ちが前面に出てくるような「熱いプレゼン」をしてほしい。熱く語る能力は、大学でも必要になるし、社会人でも必要になる。カタリ場のリーダーシップ育成プログラムは、熱い思いが無ければ成立しないようになっているので、第一段階としてはとてもいいと思っています。

あと、論理的な思考能力を鍛える効果があると思います。自分を語るというのはすごく難しい。たとえばビジネスプランについてなら、説明する流れがだいたい決まっているじゃないですか?でも自分について語るということは、決まったストーリーが無い。「自分の人生のどこに着目して話すのか?」は、生徒一人ひとりによって違ってきます。
そこで生徒たちは、「どの順番で話したら、最も劇的な効果が出るか?」を必ず考えます。普通の高校生活の中で、論理的なつながりやものごとの順番を考える機会は多くありません。でも社会人になると、仕事の進め方を論理的に考えるのは、当たり前に求められます。論理的な思考能力がつけば、仕事の中身を分析して、機能に応じたタスクの割り振りができるようになる。そういう能力を高校生のうちに学べるのは大きいし、リーダーシップにつながるのかなと思います。

Q.今後への期待は?

A.カタリバさんの良いところは、年齢の近い運営スタッフが、兄貴分としてノウハウを生徒たちに伝えてくれていることです。傍から見ていると「教員だけでもできるのではないか?」と思われるかもしれないけど、それは難しい。成績をつける側が言うのと、そうでない人が言うのではやはり違う。カタリバさんと教員が“持ちつ持たれつ”でやっているのでうまくいっていると思います。

そういう意味では、ご担当の山崎さんとは、「どうしたらもっと良いプログラムができるのか?」を語り合いながら、一緒に形作ってきました。そうやって、こちらの要望を汲みとってもらいながら、形のないものを形にしていってくれるところは、一緒にやらせてもらって楽しいなと感じているところです。世の中があっと驚くような、面白いプログラムにどんどん進化させていきたいですね。移り変わるキャリア教育の中で、カタリバがどんな新しいチャレンジをしていくのか?注目していきます。これからも、ワクワクしながらまだないものを一緒に形にしていきたいですね。

【寄付募集中】高校生に「カタリ場」を届けるための費用が不足しています

生徒の将来のために「カタリ場」を導入したくても予算の問題で断念する学校も。1,000円で1人の生徒に授業を届けられます。高校生の未来を支えるため、応援のほどお願いいたします!

【学生の方へ】高校で出張授業を行う教育ボランティア募集中!

高校生と将来について考える授業「カタリ場」を届ける仲間を募集中です。教育現場で新しいチャレンジをしたい方、お待ちしています!