【成果報告】カタリ場の変化から見えてきた新たな兆し
NPOカタリバ今村亮です。私たちがカタリ場プログラムを高校に提供し始めてから18年が経ちました。
2001年に発足したカタリバの創業期は、ちょうど国がキャリア教育を提唱し実体化していく時期と重なっています。そんな時代背景の中でカタリ場は多くの高校に愛され全国に拡がりました。心から御礼を申し上げます。
2019年現在では、高校が外部団体による出張授業プログラムを取り入れるのは当たり前のこととなりましたが、ふりかえると平成元年ころにはほぼ事例が見当たりません。そもそも平成元年には「総合的な学習の時間」の時間枠もありません。(ちなみに平成元年は消費税が生まれた年です)。学校はたしかに社会に開かれつつあります。願えば社会は変わるのですね。
さて。WEBサイトでは「カタリ場」の成果を2013年までしか公表できていませんが、今回は2014年以降の推移についてまとめてみました。
現在のカタリ場は200現場程度で安定
下記の経年推移をご覧ください。縦棒がカタリ場の提供数、折れ線が受講した生徒数になります。
総数においては生徒数は2013年の「44,248人」、提供数は2014年の「303現場」をピークに下降し、2016年以降は200現場程度で安定しています。
重要なのは内訳の変化です。
まず2011年より「カタリ場」運営ライセンスが拡がったことにより、オレンジ色にあたる提供数が堅調に推移しています。2019年現在、NPO法人いきたす(北海道)・NPO法人ブレーンヒューマニティー(関西)・一般社団法人ピープラス(福岡)・宇和島カタリバ実行委員会にライセンスが託されています。
なおライセンス期間を経て独立した、青森県総合社会教育センター「きゃりさぽ」・宮城県のNPO法人ディークレアも、それぞれの地域の高校へ活発に出張授業を届けています。
大学・自治体へのカタリ場「導入」が拡大
次に注目すべきは、青いグラフです。2013年から始まって少しずつ拡がり、今では全体の25%ほどを占めています。これは大学や自治体にカタリ場のノウハウを導入して、地域の人をキャストに育てつつ、地域の学校にカタリ場を届けるというアプローチになります。具体的な内訳を見てみましょう。
上記のように、現在の導入先は5つです。具体的にご紹介します。
(1)大分大学
2013年から一般教養の授業に導入されています。カタリバ職員のコーディネートのもと、毎週金曜2限に研修を受けた学生たちが大分県内の高校へカタリ場を届けています。
■国立大学の授業として単位認定!時代を先取する大分大学のカタリ場
https://www.katariba.net/news/2016/12/22265/
(2)益田市教育委員会
社会教育課にカタリバ職員を派遣。導入3年目にして、ついに市内全小中高へのカタリ場導入となりました。
■【メディア掲載】山陰中央新報に掲載~進路や生き方 先輩教えて 益田高で「カタリ場」授業~
https://www.katariba.net/news/2019/01/24207/
(3)雲南市教育委員会
2012年から市内の中学校へカタリ場を届けてきましたが、2016年からはカタリバ職員がコーディネーターとして常駐し教育の魅力化に取り組んでいます。
■日本最先端の教育を、人口4万のまちで創る。
https://greenz.jp/2018/12/04/katariba_kyujin/
(4)文京区教育委員会
カタリバが運営する文京区青少年プラザb-labのスタッフが区立中学校に出向き、カタリ場スタイルのプログラム「出張b-lab」を提供しています。
■今年もb-lab出張します!
http://b-lab.tokyo/blog/6160
(5)山口県教育委員会
山口県内の大学生を募集し、カタリバ職員の研修のもと、山口県立高校にカタリ場を届けました。2018年現在は運営が山口大学へ引き継がれ継続しています。
■【現場レポート】地方の高校生にとって地元大学は魅力的?山口県教育委員会×カタリ場の事例
https://www.katariba.net/news/2017/08/23168/
以上です。というわけで拡がっている全国の大学・自治体への導入。カタリ場の担い手はますます多様化・オープンソース化しています。カタリ場プログラムはNPOカタリバだけが担うのではなく、全国のツールとなりました。筆者はこのありかたに強い希望を感じます。2019年も応援の程よろしくお願いいたします。
(文責:今村亮)