生徒の仮面がはがれる瞬間〜先生から見た「カタリ場」〜
とある高校の先生が、「koara先生の学級通信」という
ご自身の発行するメールマガジンの中でカタリ場について語ってくださいました。
その一部をご紹介します。
現場で起こっている化学反応を、臨場感たっぷりに描いていただいています!
まるで、生徒の顔が見えるようです。
ぜひ、ご覧下さい!
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昨日、所属校でNPOカタリバによる授業がありました。
1年生を対象に、2回実施するうちの1回目です。
昨年は担当者だったこともあって、あまり余裕がありませんでしたが、
今年はじっくりと見させていただきました。見ていたのは生徒の顔です。
生徒がどう動き、どう感じているかを見ていました。
内容はというと、体育館に全員集合した後、
体育館の壁沿いに散らばったカタリバスタッフ(大学生)のお話を
聴きに行くというものです。
先輩たちの話はサンプリングと呼ばれるものですが、
スケッチブックに書いた手書きの文字や絵を使いながら、
自分のいままでのことを語るというものです。
徹底的に訓練されていて、1人1人の話がとても心に響くものに仕上がっています。
もちろん語り方も素晴らしいものです。
(中略)
サンプリングというのは、自己開示です。
「高校時代、友だちがいなかった」
「友達に裏切られた」
「自分なんて価値がないと思っていた」
「部活を一生懸命やっていたけど、試合に出られなかった」。
そういった体験を赤裸々に語るんです。生徒たちはそれを食い入るように聴きます。
誰の話を聴くかは生徒たちに任されていますので、1回目はなんとなく動きます。
様子見です。友だちの様子をみながらです。
話を聴く姿勢がいい加減な子もいますし、あまり真剣でない子もいます。
でも、そこで先輩たちの強烈な自己開示と出会います。
そしてだんだんと顔が変わっていくんです。
2回目は、もっと聴きたいという気持ちになるんでしょう。
また、場に慣れてきたんでしょう。より積極的に動きます。
そして2回目のサンプリングを聴きます。ここでも強烈な自己開示と出会います。
顔が変わっていきます。オモロイです(^_^)
顔がどう変わるのか?
先輩たちの熱い話を聴いて、顔がどんどんおとなしくなっていくんです。
落ち着いていく。熱く、興奮した顔ではありません。いわば素の顔になっていく。
先生方から見れば、素直でかわいい生徒に見える。
極端に言えば、それまでの生徒の顔は演じている顔です。
クラスの中で、学校の中で演じている顔です。常に周りを意識しています。
その仮面が、サンプリングに聴き入っている中ではがれおちていく。
そして素の顔になっていく。落ち着いていくんです。
エンカウンター合宿の初日の夜のワタシです。
素の自分になって、やけに脈が遅くなっていったあの感覚に近い。たぶん。
サンプリングの先輩たちの内容はみんなちがいますが、
生徒に伝わる共通するメッセージがあります。
エンカウンターの言葉でいえば、「私は私だ」です。
「こんな失敗もしてきたけど、乗り越えて(乗り越えられなくて)、
今の自分がある」ということです。「I’m OK!」というメッセージです。
サンプリングを作る過程で、自分自身と徹底的に向き合い、
こんな自分だけど、これが私ですという自己受容ができているんですね。
ありのままをさらけ出す先輩たちを目の当たりにして、
子どもたちは自分と向き合っているんですね。
人は、他人の自己開示を聴くことで、
自分はどうなんだ?と思わずにはいられないようです。
子どもたちが静かに、落ち着いていったのは、自分自身にベクトルが向いていた、
演じている自分ではなくホントの自分と対話を始めていたからなんです。
そんなこと去年は気づきませんでした。
話がオモロイからみんな聞いているんだろうと思っていました。
思考の部分ばかり考えていましたが、実は揺さぶられているのは
子どもたちの感情の部分でした。
3回目は、一人で動く子が何人もいました。
女子の中に男子一人だけとか、男子の中に女子一人だけという子もいました。
終わってからちょっと聞いてみたんですが、何か引っかかるところがあって、
話を聞いてみたかったんだということを言っていました。
1回目にあまり真剣でなかった子の表情にも注目していましたが、まるで別人でした。
いい顔してました。(^_^)
子どもたちの顔を変えさせたのは、話の内容の面白さではありません。
話し方のうまい下手ではありません。紙芝居のうまい下手でもありません。
自分をさらけ出して「私は私だ」と宣言する姿と出会ったことが、
子どもたちの顔を変えさせたんだと思います。
3回目はほとんどの子が流されることなく、
自分の意志で先輩のサンプリングを選択していました。
自分が共感出来そうな先輩、こうなりたいなと思わせてくれる先輩を
感じて動いていました。
出会いですよね。ホンネとホンネの交流です。それが素晴らしい。
昨年も素晴らしいと思いましたが、なんで素晴らしいのかうまく説明できませんでした。
でも今年はわかりました。うれしい(^_^)
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(「koara先生の学級通信1136~カタリバはエンカウンターだった!~」より抜粋)
「いいね!」と応援の声をいただいたり。
自分たちには見えなかった、思わぬ気づきをいただいたり。
時に愛あるお叱りをいただいたり。
いつの時もカタリ場は完成することなく、
先生方をはじめ、関わってくださる多くの方々に育てられていると感じます。
その想いと期待に応えられるよう精進しなければ、と
身の引き締まる思いで拝読した、メルマガでした。