カタリ場を受けた私が、キャストになった理由
高校生の時にカタリ場を受け、
卒業後「自分が高校時代に貰ったものを返したい」という思いで
カタリバのキャスト(ボランティア・スタッフ)になってくれた、
石崎なつみさんに、お話を聞きました。
なつみさんが、カタリバに出会ったのは高校1年生のときのこと。
それまでも、なんとなく将来の進路のことは考えていたと言います。
「人が好き、こどもが好きだったから、なんとなく保育士かなとは考えてました。」
「親に対して、いつも『しっかりしている』ように見せたくて。
保育士の情報を色々調べてきちんと質問にも答えられるようにしてたんです。
でも、保育士になる、という目標は、
今考えるとどこか納得感が低かったかもしれない。」
そんななつみさんは、カタリ場で
ある大学生に出会います。
その大学生は、ディズニーランドのホテルでアルバイトをしていた大学生。
そこでの”おもてなし”の素晴らしさと、ホテルスタッフになるという夢を、
紙芝居にして高校生たちに語っていました。
そういう仕事があるんだ、という発見と、
彼のおもてなしへのこだわりに感動し、
なつみさんは「自分もホテルスタッフになろう!」とその場で決意します。
■
時は過ぎて、高校3年生の5月。
再び、なつみさんの高校でカタリ場が行われました。
仲の良かった友達と、大学生の先輩と一緒にグループを作って、授業がスタート。
なつみさんは、担当の先輩に、1年生の時に決意した
「ホテルスタッフになりたい」という夢を打ち明けます。
しかし、先輩から返ってきた言葉は、
なつみさんにとって、意外なものでした。
「先輩の話に影響を受けたとは言え、
何で突然保育士からホテルスタッフに将来の夢が変わったの?」
「そういう仕事があるって、知ったから。」
「知ったっていうことが理由なら、
じゃあリポーターっていう職業を知ったら、なりたいと思う?」
「うーん・・・思わない。」
「じゃあ、何でホテルスタッフになりたいのかな?」
「誰に対しても、いやな顔はしないタイプなんです。
だから接客には自信があるし、それに人が好きだからかな。」
「じゃあ、なつみは、何で人が好きなの?」
「え・・・?! 人が好きって何だろう?」
先輩になんだかちょっぴりしかられたような気がして、
なつみさんはそれから「人が好き」な理由を考えるようになったそうです。
また、その先輩から言われた、
今でも忘れられない言葉があると言います。
「自信があることはいいこと。それを仕事につなげたいのも、いいこと。
でもこれ(ホテルスタッフ)一本って決めなくても、
接客やりたいなら、例えばマックとか、他の場所でもできるよね。
“どこで”じゃなくて、”何で”やりたいかがわかれば、
どんな場所でも輝けると思うよ!」
なつみさんはその時の気持ちを、
振り返ってこう話してくれました。
「もし友達に相談しても、『接客したかったら、バイトでもすれば』
なんて軽くあしらわれちゃってたと思うんです。
それに、そもそも友達に将来のことを相談する機会もなかった。
でも、先輩にはありのままを話す事ができて、
そして、それを認められた気がして、すごく嬉しかったんです。」
また、他のある先輩と話した時のこと。
「そこまでちゃんと色々調べられててすごいね。
でもそれなのに動いてないのはもったいないよ!
次は行動してみたら?」
ホテルの仕事に就くには、どんな学部に行ったらいいか、
その学部がある大学はどこかなど、
なつみさんが色々調べていることを知って、先輩が背中を押します。
その一言がきっかけで、なつみさんは
高校3年生の夏休み、オープンキャンパスに参加します。
なつみさんは、AO入試での受験を考えていたので、
その後も何度も何度もオープンキャンパスへ足を運んでは、
そこで実施してくれる模擬面接を受けたそうです。
そして、その努力が実り、ホテルスタッフになる上で欠かせない、
経営学やホスピタリティについて学べる第一志望の大学に、見事合格。
自分の足で、夢への一歩を叶えた大学1年生のなつみさんは、
現在、カタリバのキャストとして活躍しています。
そんな彼女に、”カタリ場を届ける側”になった理由を、聞きました。
「高校生のときに先輩がしてくれたことを、返したいと思ってるんです。
私は情報をたくさんもってるわけじゃないから、
アドバイスができるわけじゃないけど、
高校生って、実は色々なところに将来のヒントがあるって知らないから、
それを伝えたいんです。
私は、まずホテルで働けるってこと自体、知らなかった。
高校生は勉強に部活にバイトに・・・目の前のことでいっぱいいっぱい。
視野が狭いんですよね。
だから、キャストになって、高校生にヒントをあげたい、と思ってます。」
「そして、もうひとつ。高校生の強い味方でありたいんです。
高校時代、『夢がないとダメなのかなぁ・・・』
『何もない人がダメなんじゃないかっていう気がしちゃう・・・』
って言っている友達がいたんですよね。
そういう子がホッとできる存在でありたい。
高校生1人1人の、ありのままの個性を受け止めて、
認めてあげられるようなキャストになりたいんです。
私も、先輩に認めてもらえたことで、一歩を踏み出せたから。」