「生き抜く力」を子ども・若者へ 〜“カタリバの未来”を形づくるため、理念を再定義〜
特定非営利活動法人NPOカタリバは、10月28日に事業報告会を開催しました。
2012年4~8月期のカタリ場やコラボ・スクールの成果について報告するとともに、
再定義した理念「『生き抜く力』を、子ども・若者へ」を発表しました。
教育環境の格差は、進路にも大きく影響
NPOカタリバが取り組む社会課題は、
「子ども・若者の未来を生き抜く意欲や能力が、
生まれ育った環境によって左右されてしまうこと」です。
教育環境の格差は、たとえば以下の社会調査によっても裏付けられています。
・家庭の世帯年収が、高校卒業後の予定進路に大きく影響する
:世帯年収が1000万円超の家庭で育った高校生は、4年生大学への進学が62.4%・就職などが5.6%に対して、
同じく400万円以下の高校生は、4年生大学への進学が31.4%・就職などが30.1%。
(出典:東京大学大学院教育学研究科 大学経営・政策研究センター 「高校生の進路追跡調査 第1次報告書」(2007年))
・高校生の進路選択は、身近な環境に左右される
:高校生が進路について相談する相手は、1位:母親、2位:友達、3位:父親、
4位:高校の担任の先生、5位:兄弟
(出典:リクルート進学総研(2011)「高校生と保護者の進路に関する意識調査」)
「たまたま出会った環境や、受けられた教育によって、
描き出せる未来のイメージさえも違ってしまうこと」
このことに代表理事 今村久美が疑問をもったのが、
カタリバ創業のきっかけでもあります。
不確実な未来を、「生き抜く力」を
2001年の創業から10年以上が経ち、グローバリゼーションやIT化が進展するなかで、
雇用環境も大きく変化しました。子ども・若者が、生き抜くことさえ難しくなっていく。
そんな未来も予想されるなか、彼らが生まれ育った環境によらず、
それぞれの“無限の可能性”を開花させられる社会を実現するため、
私たちが再定義した理念が「『生き抜く力』を、子ども・若者へ」です。
カタリバが考える「生き抜く力」とは、「自律」「共生」「イノベーション」です。
1.自律:どんな環境にいても、「未来は自分自身で創り出せる」という期待感を持ち続けられる。
自ら目標を定めて目の前の「やるべきこと」から、逃げずに向き合う。
2.共生:周りを思いやり、「地域」や「社会」などコミュニティのため共に助け合う。
他者による環境の改善を期待するのではなく、当事者として参加する。
3.イノベーション :時代がどのように変化しても、自ら考え、課題を設定する。
その解決に向けて、リーダーシップをとりながら変革を進めていく。
このように、自らの「持ち場」で、新しい価値を産み出していける。
どんな困難が待ち受けていようとも、この社会を生き抜いていける力。
そして、思い描いた未来を創っていける力を、どのような家庭で、
地域で育った子ども・若者にも届けることを、カタリバは目指します。
「“ナナメの関係”による場創り」が、価値を生み出す
この理念を実現するため、カタリバが重点的に取り組むのは
「カタリ場」「コラボ・スクール」の2つの事業ですが、両事業において
私たちがコア競争力とするのが「“ナナメの関係”による場創り」です。
先生でも親(タテ)でもない、友達(ヨコ)でもない、
一歩先をゆく“先輩” (ナナメ)との出会いが、
子ども・若者を動機づけ、彼らの可能性を引き出します。
カタリバは、多様な大人・若者に“教育の担い手”として参加してもらうことで、
設立以来11年間、この“ナナメの関係”を活用した場を、創り続けてきました。
たくさんの大人・若者を巻き込み、社会全体で教育を支える
この“ナナメの関係”を活用しながら、カタリ場でもコラボ・スクールでも、
3つのステップで社会変革を実現してまいります。
1.教室に社会を届ける
ナナメの関係によって、子ども・若者の意欲や創造性を引き出します。
目標に向かって安心して努力し続けられるように、仲間や機会との“出会い”を仕掛けます。
2.周辺環境と連携する
子ども・若者の日常を支えている、学校・保護者・地域など周辺環境と連携します。
また、行政と連携することで、子ども・若者を応援するための政策立案に貢献します。
3.新たなコミュニティを創り出す
ナナメの関係で子ども・若者に関わることは、大人や若者自身の成長にもつながります。
当事者意識が引き出された子ども・若者・大人が、がそれぞれ自らの周辺環境を
変えていく新たなコミュニティを創り出します。
これらによって、たくさんの大人・若者を教育活動に巻き込み、
社会全体で教育を支えていきながら、「生き抜く力」を
そなえた子ども・若者を、数多く輩出していくことを目指します。