授業の導入

導入事例:東京都立杉並総合高等学校

「カタリ場」など約10年間導入いただいている、東京都立杉並総合高等学校に、導入前の課題や実施時の様子、授業後の生徒の変化などをお伺いしました。

「先輩との出会い、カタリ場によって、キャリアを主体的に考えるきっかけに…」

「先輩との出会い、カタリ場によって、キャリアを主体的に考えるきっかけに…」
学校名
東京都立杉並総合高等学校
所在地
東京都杉並区
創立年
2004年
課程
全日制課程
設置学科
総合学科
導入プログラム
カタリ場キャリア・リテラシー
対象学年
高校1年生、2年生
実施時期
2005~15年度

Q.導入前の課題は?

A.本校には留学する生徒も多く、26、27年度は「カケハシプロジェクト(アメリカ)」に12名や、「トビタテ!(インドネシア)留学JAPAN」、韓国なども併せると30名近い生徒が選ばれて、数週間(数か月の生徒もいる)海外での奉仕活動やプレゼンテーション等を経験しました。留学した生徒の多くは、行動を起こす大切さを実感したうえで帰国します。
たとえば、ある生徒は3年次生の段階でまわりから大学を強くすすめられたが、就職するための準備をすることを決意していました。しかし、帰国後は「海外での経験から、自分は出会いから学びたい。どんな出会いをするかで自分が変わる。大学で自分のコミュニケーション能力とリーダーシップを試したい。」と、大学への進学志望に変わっていました。
このようにきっかけをつかみ、意識が高まった生徒は、「奉仕」の授業などにも積極的に参加します。もちろん、全員がそうという訳ではありません。「総合学科」ということで大学受験もできるし、進路選択の幅が広いのはよいのですが、やりたいこともなかなか決めきれず、苦手教科を避けるために(文理等)選択をして、学力を高める機会をつかめない生徒も一定数いるようです。進路に真剣に向き合うことを、避けてしまうことも…。何事にも可能性を持っていて、素直な生徒が多いのですが、「中だるみ」の時期があって、「もったいないな・・」と感じていることもあります。

Q.カタリバに相談した理由は?

A.高校3年生への進路指導のなかに「面接指導」があります。実はこの指導の中で、生徒の意識は急激に高くなります。面接指導では、「何をするために大学に行くのか?」「将来何をしたいのか?」「高校時代に何をしてきたか」などを、生徒に問いかけています。この質問に向き合うなかで、生徒が大人になっていく…。それと同じことが、もっと早い段階で起きてほしいと思っていました。 高校1・2年生の時期には、どんな進路を選ぶにしても、多くの生徒は「社会に出る」ということを実感できていません。その段階では、進路選択の実感も湧かないし、「何のために進学するのか?どんな職業がある?何を目指すのか?」がわからない。でも、社会に出ることを“自分ごと”と捉えられるようになると、生徒は本気になります。このようにして当事者意識が生まれれば、学習効果も高まるはずです。

カタリ場は、「先輩、つまり大人と語ることによって、生徒が大人に近づく経験」だと、捉えています。一番の魅力は、語ってくれる人が本気なことです。「自分自身と向き合い、行動しなければ実感できない」そういう体験が大事だと思っています。生徒たちは、能力がないのでは決してありません。進路に向けての意識が高くなり、自分の進路に向けて準備することが何よりです。なのに実際には、きっかけがなければ行動にも移れない。そして、全てが後ろ倒しになってしまいます。カタリバの授業を通して、近い将来(あるいはちょっと遠い将来)を、現実味をもって感じられることが、生徒の行動を引き出してくれるはずです。

Q.授業当日の様子は?

A.高校1年生の2月に「カタリ場」を、2年生の7月に「キャリア・リテラシー」を、さらに2年生の11月には再び「カタリ場」を、と計3回実施してもらっています。授業枠は、いずれも特別時間割を組んでいます。
1年次の「カタリ場」でキャリアプランや進路意識を早期から高め、日々の学校生活において目的意識を持って過ごす動機付けとして導入しています。
次の「キャリア・リテラシー」では、夏休みをなんとなく過ごすのではなく進路選択の情報収集期間として活用してほしいという思いから、進路をより具体的に意識するスイッチとして導入しています。
2年次のカタリ場では、学生だけでなく社会人のスタッフからも「先輩の話」をしてもらうことで、より具体的に卒業後のイメージを固めて、進路実現に向けての行動を促すことがねらいです。
以上のように、生徒の進路意識に合わせて3つのプログラムを活用しています。

Q.生徒の変化は?

A.授業を受けて、刺激を受けた生徒が多かったようです。たとえば、1年生の「カタリ場」を受けたなかには、家庭での悩みを抱えていた生徒がいました。本人は、その悩みを「誰にも理解されない・・」「理解してくれない・・」と思っていたようです。
しかしカタリ場では、同じような体験をして、「自分も高校時代、こんなことに悩んでいた」と話してくれた先輩と出会ったそうです。生徒は自分の話を先輩に相談できたようで、「理解してもらえて嬉しかった!」と感想を述べていました。
生徒はそこから前向きになって、本当に自分のやりたいことを目指し始めます。進路に対して主体的になった結果、それまで希望していた進路を「変更したい」と自ら選びました。これまでの過程で、いろいろなものをずっと諦めてきた生徒だったので、刺激になったようでした。

Q.今後への期待は?

A.取り巻く環境や出会いによって、生徒の成長度合いは変わります。「カケハシプロジェクト」や「トビタテ!留学JAPAN」等で海外に行った本校の生徒も、「出会いから学びたい。どんな出会いをするかで変わる。だからこの大学に行きたい。」と話していました。進路選びでも、「努力した集団に身を置くのか?そうでないのか?」では、生徒自身が受ける影響は大きく異なるでしょう。
本校は「総合学科」なので、多岐にわたって生徒ひとりひとりが望む進路を実現させることが務めです。一方で、生徒たちの進路選択が定まっていないのであれば、選択肢が狭くならないように(広げられるように)働きかけてあげることも重要でしょう。彼らが自分にとって良い環境を選択できるように、「選ぶ力」を育てたいと考えています。

生徒の成長は「出会い」による部分が、非常に大きいと実感しています。ですから、学校としても、良い出会いをつくっていくことに取り組んでいます。学内での出会いや、学外での出会い、両方に注力しています。たとえば学内では、国際交流が盛んで、留学生や交流生を招いてのコミュニケーションの場面が多くあります。学校外でも短期交換留学を行っていたり、奉仕活動や部活動で地域の方々との交流が盛んです。お祭りのお手伝い、小学生に算数を教えるなどの活動を通じて出会いの機会をつくっています。

卒業生との出会いも用意したいのですが、本校は設立から10年少しと若い学校なので、卒業生がまだ多くありません。その意味でも、カタリバの学生さんや社会人の方にはこれからもぜひ関わってもらいたいです。さらに、新しい出会いからコミュニケーション能力を育て、主体性を持って進路決定できるようにとアイデアを練っています。これまでのカタリ場はもちろん、本校の先輩が後輩に向けてカタリ場を行っていくといった中でロールモデルとなる先輩がでてくれることを願っています。

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