【現場レポート】どうして高校生は友達に本音を言えないのだろう?

2017.1.22 事例紹介

NPOカタリバ今村亮です。

みなさまのご支援のおかげで、今年度は出張授業カタリ場を全国270校で実施することができました。心から御礼を申し上げます。

とはいえ、僕自身が高校生と語る機会がそれほど多いわけではありません。ひさしぶりに先日とある高校に出張したときの振り返りをレポートしたいと思います。

⚫3人の女子高校生との出会い

訪れたのは共学の高校。大学・専門学校・就職など多様な進路を目指す生徒が集まる学校でした。そこで出会ったのは高校1年の女子3人組。黒髪で化粧っ気もなく、制服をきちんと着た彼女たちは、真面目で大人しい印象のグループでした。

出張授業カタリ場はたった120分。一発勝負のプログラムです。第一印象で心の壁ができてしまったら、それで試合終了です。僕のように高校生と年齢が離れてしまうと尚更なので、最初の3分に命をかける必要があります。

自己紹介でわかったのは、彼女たちのクラスではRADWIMPSというバンドが人気ということ。映画で流行した「前前前世」より初期の曲の方がいいよね、と盛り上がっていたので、34歳の僕でもなんとか話題についていくことができました。ほっと一安心です。

そのまま何分経っても当たりさわりのない趣味の話題を抜け出そうとしない3人でしたが、自分の本音をさらけ出すカタリバキャストの「先輩の話」を聞いた後それぞれ分かれて話し始めると、少しずつ心の内側を語ってくれました。

⚫少しずつ語られた本音

A子さん:中学の部活では全国大会に届かなかったので、高校でまた全国を狙っている。でも中学時代の先輩にしごかれて壊されて手術したヒザの傷が今でも傷んでいる。今でも時々その先輩から連絡が来るので、LINEの通知音が鳴るのが怖い。

B子さん:教室で一緒に弁当を食べる相手がいない。A子は昼休みも練習に行ってしまうので、ひとりぼっちになってしまう。でもA子を心配させたくないから言えない。中学時代に戻りたい。

C子さん:実は自分は普通の高校生じゃない。小さい頃から家族が大変で、家族と一緒に暮らせなかった時期が何度もある。自分と同じ経験をしている子どものために児童福祉を学びたいけれど、大学に行く家計的な余裕がないので事務の仕事に就職しようと思っている。

3人にこんなにも多様なドラマがあるなんて・・・。僕はびっくりしました。

同じ高校に通い、同じ制服を着て、同じ校則を守って、同じ趣味があろうと、ひとりひとりの高校生の内面は全く別物です。当たり前のことですが忘れてしまいがちです。

⚫友だちに明かした心の内側

授業の最後、3人が僕の前に合流しました。おそるおそる、お互いの顔を見渡す3人。取り繕うように趣味の話題を始めようとしたのはB子さんでしたが、C子さんが目に涙をためていることに気づいて止めました。少しの沈黙が訪れました。

口火を切ったのはC子さんでした。自分を受け入れてくれている2人への感謝が語られました。それから3人はお互いに言えなかった自分の気持ちを、ポツポツと話し始めました。B子さんも涙を流し始めました。

生徒たちはこの時を待っていたように思いました。ワークシートに書いてくれた約束はこんな内容でした。

「今まで言えなくてごめんね」
「友達なんだから何でも話してほしい」
「支えられる人になりたい」
「将来のため親と進路の話をする」

3人は涙を拭いた後、手をつないでパタパタと走りながら、体育館を後にしていきました。

⚫本音を語るのが難しい時代

高校生は過剰に空気を読みます。お互いの目線を気にして、嫌われないよう気づかって、自分が傷つくのを恐れて、本音を隠してしまう時期なのでしょう。まだ環境に馴染んでいない高校1年生となるとその傾向が特に強いのかもしれません。

しかも今の高校生はSNS時代を生きています。下校した後もSNSの関係性からは逃げられず、クラスLINE、部活LINE、イツメンLINEなど、スマホを通して空気を読み続けなければならない環境が24時間続きます。思春期のストレスは大変重いのではないかと想像します。

だからこそカタリ場です。たった120分ですが、利害関係のない第三者が出向くことで本音の対話を導く場をつくることができます。重要なのは安心感です。本音を口にしても大丈夫だ、と高校生が思えるようなプログラムの仕掛けと対話スキルがカタリ場のポイントです。もしカタリ場でうまく本音を交わし合うことができたら、その後の友達関係にもポジティブな影響が続きます。

高校生を取り巻く難しさと、対話の可能性を現場で痛感することができました。今後も折を見て、現場に参加し続けたいと思います。


(文責:今村亮)
※記事中の写真は当日の様子とは異なります。

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