【事例紹介】国立大学の授業として単位認定!時代を先取する大分大学のカタリ場

2016.12.03 事例紹介

高校生の心に火を灯す「出張授業カタリ場」は今、全国的な拡がりを見せています。2015年度には、5,015人の先輩が全国274校へ訪問し「カタリ場」を行いました。

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カタリ場では、先輩役のほとんどが学生のボランティアです。

実は今の学生にとって、ボランティアに参加するのは簡単ではありません。今や大学の講義のほとんどが出席を取る仕組になっているからです。ボランティアに参加するためには学生は、履修の時間割を工夫し、やむをえず欠席する場合は教授と調整をし、なおかつアルバイトの予定を調整し、就活の予定を調整する必要があります。これは並大抵のことではありません。

だからカタリバ事務所の学生たちの間では、よくこんな会話が交わされます。

「カタリ場が単位になったらいいのに・・・」
 

カタリ場の活動が単位に?大分大学の事例がすごい!

そんな中、今回ご紹介したいのは国立大学法人大分大学の事例です。

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大分大学経済学部は2013年から教養科目「カタリバでキャリアを拓く」を毎年秋学期に開講しています。

このプログラムは、出張授業カタリ場を大学の正課に導入した全国初の事例です。正課ということはつまり、履修した学生に単位が認められるわけです。なんと・・・。今やこの授業は経済学部・教育学部を中心に人気授業となっています。

仕掛け人はこの人。大分大学で副学長も務められた、経済学部教授の宮町良広先生です。

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この事例は、秋学期15コマを活用したカタリ場プログラムです。履修者は半期を通して、下記の5ステップを学びます。

① 自分の高校時代を振り返る
② 高校生の実情を学ぶ
③ 対話コミュニケーション練習
④ 高校へ訪問しカタリ場を実施
⑤ 自分のキャリアを振り返る

つまり学生たちは、教室で学ぶだけではなく実際に大学を飛び出して高校に出向くわけです。こうした実習型授業は、高校生のための活動であると同時に、大学生にとっても重要な学びの機会となります。

しかもこの科目は大学間の単位互換が可能ですので、近隣の私立大学等からの履修も可能です。例年の傾向では立命館アジア太平洋大学(APU)からの履修者が目立ちます。

こうした取組は全国的にも先進的であることから、地元紙にも注目されています。こちらは2015年度に、大分商業高校に訪問した際の記事です。

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そして今、大分大学のカタリ場はどんな盛り上がりを見せているのでしょうか?東京から訪問することにしました。4年目となる2016年度の授業は30名を越える履修者でスタートしたとのこと。第4コマ目となる12/2(金)は、訪問高校の生徒の実情を学ぶ回です。

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なんと、教壇に立ち授業の企画運営を行っているのも学生。立候補で名乗りを上げた3人が企画リーダーを務めます。緊張した様子で、授業を進行します。

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宮町先生はその様子を見つめます。

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授業を影で支えるコーディネーター・佐藤先生の存在も重要です。佐藤先生は元々は県立高校の校長先生で、退職後に大分大学に来られました。つまり学校や先生方の実情に関するプロです。この日は佐藤先生からも訪問先の高校に関するレクチャーがありました。

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さあ。たまたま履修した授業で出会った30名は、ついに二週間後、チームとなって高校に訪問します。その心境はどんなものなのでしょうか?

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履修者の本音をインタビュー。なぜ履修したんですか?

では、授業に参加しているのはどんな学生たちなのでしょうか?履修者の本音が気になって、インタビューしてみました。

しんくん(大分大学経済学部2年生)
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たまたま春学期の授業で宮町先生から、カタリバについて胸が熱くなるような紹介があり「いいな」と思って履修しました。これから再来週、実際に高校に出向くわけですが、自分には大層なことは言えません。高校生にとって、自分の中に秘めた熱いものを発見してもらえるような場になったらいいなと思います。

とても頼もしいコメントです。たしかに、カタリ場の授業で重要なのは、押しつけではなく引き出すことですね。

ウエノ(大分大学経済学部1年生)
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シラバスを読んで「意外と楽しいんじゃないか」と思って履修しました。私はサークルにも入っていないし、大学にあまり友だちがいないので、こういう授業はありがたいです。

でも自分なんかが高校に行っていいのかな・・・という気持ちもあります。私はあまり学校に行かなかったので高校を3年で卒業できず、4年目は定時制の高校に通ってようやく大学生になれました。とても大変な思いをしました。正直に言うと、高校生をひがんでいるかもしれません。もし今の環境に苦しんでいる高校生に出会ったら、自分に合った環境を見つければいいんだよと伝えたいです。

 
高校生と語ることによって、大学生たちが自分自身の学ぶ意味を見つめ直すこともカタリ場の重要な意義です。大学生たちひとりひとりが持つ進学のドラマが、15コマの授業を通して意味づけられ、語られてゆくプロセスは圧巻です。これからも大分大学の動向に目が離せません。

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立候補した企画リーダーの3人。
左から、ひなぼう(経済学部1年)、せんちゃん(経済学部3年)、そのも(教育学部2年)

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ステューデントアシスタントの2人。去年は履修者だったが今年は授業を支える役割に。
左から、つな(教育学部3年)、ピーマン(教育学部4年)

(文責:今村亮)

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