【活動紹介】第15回カタリバ教育グッドプラクティスセミナー 〜「3.11×国語」の授業〜を開催しました
東日本大震災からもうすぐ5年。どう、今度の3月11日を迎えるか。
そこで、2月20日(土)に開催された第15回カタリバ教育グッドプラクティスセミナーでは、「震災後、生徒にどんな授業をしたのか」をテーマに、講師には、東北から佐藤敏郎先生(元・中学校教員)をお招きし、実際に行なった国語の授業を受けながら、「教材」について考えました。
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◆「3.11×国語」佐藤敏郞先生の授業
入試や受験シーズン真っただ中の週末にも関わらず、会場は満員御礼。北は仙台からのご参加に、「今日は出勤日だったので…」と息を切らせて駆けつけてくださった私立の先生方、また「敏郎先生の教え子です」という、神奈川県立高校の先生のご参加もありました。
◆中島みゆきの『永久欠番』で始まった新学期
「あの年は、さすがに‘授業’って何だろう?を考えざるをえなかった。教師としても、原点を確認する大切な機会だった」というお話からはじまりました。
1時間目は、震災直後に敏郎先生が行なった授業について。4月、教科書で待っていた最初の教材は、中島みゆきの『永久欠番』の詩でした。果たして、このタイミングでのこの教材をやるべきなのか、やらないべきか…。
「みなさんだったら、どういう授業を行ないますか?」という問いかけに、参加者同士で考えました。
そして敏郎先生は、いったいどんな授業を行なったのでしょうか。(詳しくは、ブログ「被災地の教育現場」をご覧ください。)
また、授業を進めるなかで「震災に関係なく」という言葉を繰り返されていた敏郎先生。「作品が教材となるために大事なこととは何か、生徒にどういう問いを投げかけるか、という教材化と発問の重要性を、ここでは伝えたかった」という言葉で、この時間は締めくくられました。
◆自分自身と向き合う俳句の授業
2時間目は、俳句の授業について。現実や悲しみ、自分自身とも、別に向き合わなくてもなんとか生きていける今の時代のなかで、敢えて‘向き合うこと’をする授業。これは震災以前から、敏郎先生がずっとやってきた俳句の授業です。
5月。迷いに迷った結果、敏郎先生は俳句の授業を再開。すると、すぐさま指折り数えはじめる生徒の姿があちこちで見受けられました。「みんな、この機会を待っていたのかもしれない。」そう思ったとのことです。
授業後、俳句を提出しなかった生徒がいました。職員室で、回収した用紙を見ながらその生徒の名前がないことに気づき、「しまった、やってしまった…」と。
でも、その生徒は翌日に俳句を持ってきました。「‘逢う’と‘会う’の使い方を調べたくて、一晩考えてきたのだ」と。
「逢いたくて でも会えなくて 逢いたくて」
(つづきは、こちらの本をお読みください。『女川一中生の句 あの日から』はとり文庫 )
言葉は、説明をする道具であるだけではなく、自分との対話、心のケアの力も含む偉大な道具であることを、この授業では伝えたかったと話されました。敏郎先生の、‘言葉にたどり着く’‘彼らの到達に委ねる’という表現がとても印象的でした。
◆3.11を学びに変える「教育旅行」
3時間目は、3月11日から今日までの様々な取り組み紹介の時間。課題発見・解決型学習「教育旅行」の導入校、私立湘南学園高等学校の山田先生もお話しくださいました。(詳細は、こちら)
「中でも印象的だったのは、ほかのみんなにも知ってほしいから敏郎先生を招いて話してもらおう、というのではなく、自分たちの気づきを、自分たちが伝えなきゃ、という使命感・主体性が、生徒たちのなかに芽生えたことだ」と山田先生は仰います。彼らは、学校に戻ってからすぐに「東北部」を結成。生徒主体の震災学習がはじまっているようです。
また彼らの「東北部」の活動は、カタリバが主催する地域やコミュニティのために活動する高校生のアクションを競う、マイプロジェクトアワードの東京大会を勝ち抜き、全国大会への出場が決まりました。
◆教員が、子どもたちにできる最大の支援・・・
「毎日何が正しいかも、どちらが正解かもわからない。ただ、常に意識していることは‘真ん中を子どもの命にしたい’ということだけです。そうすれば、大概は間違わない。そして、生かされた意味・役割を問いつづけながら、いのちの意味づけ、未来への意味づけをやっています」という敏郎先生の言葉で、授業は締めくくられました。
「3月を前に、自分が目を背けていたものと向き合えました。」
「国語の教員ではないけれど、何かしらの形で教科と繋げられたらと思います。」
「いのちについて、日々考えさせられることが多いなか、学校・教師の役割について改めて考えさせられました。」
など、参加者アンケートより一部抜粋です。
また、教員を目指す学生からは、
「今まで、学生・生徒という立場から授業を受けていたが、今後は子どもたちに何かを伝えていく立場として、まずは自分が感じ、考える者になろう、ならなければということに気付いた。」
「辛い経験・出来事をも、かけがえのない教育の機会に変えていく敏郎先生に、自分も教員を目指すひとりとして、大変心を打たれた。」
などの感想が、寄せられました。
その後の懇親会へもたくさんの方がご参加くださり、まだまだ話足りないぞと二次会へ、高円寺の赤提灯が賑わいました。
「教員が、子どもたちにできる最大の支援とは、『授業』ですね!」
最後に、アンケートにあった久仁子先生の言葉をお借りしつつ、私たちNPOカタリバも、社会教育の立場から、今後も先生方をはじめ、いろいろな立場の方と共に、日本の子ども・若者のことを考え、信じ、働きかけていきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いします。
<関連情報>
■【募集中】教員向け「教育旅行」視察ツアー
[日程]:2016年3月28(月)・29(火) @女川町ほか
※詳細は、03-5327-5667(担当:ハヤシ/ミカヤマ)までお問い合わせ下さい。
■【ご案内】「教育旅行」- 3.11を学びに変える旅 –
[プログラム内容] http://www.katariba.net/class/trip/
[導入事例] http://www.katariba.net/teacher/intro/shounan/
※詳細は、03-5327-5667(担当:ハヤシ/ミカヤマ)までお問い合わせ下さい。
■【ご案内】敏郎先生の活動
[ブログ]「被災地の教育現場」
※カタリバの放課後学校「コラボ・スクール」webにてブログ連載中
[図 書]『16歳の語り部』ポプラ社
『女川一中生の句 あの日から』はとり文庫
■【お知らせ】次回のGPセミナーは、4月頃の開催を予定しています。
※テーマ&講師募集中
(文責:三箇山優花)