【メルマガ】「向学館では、勉強だけでなく、“人生”を教えてもらいました」
こんにちは、NPOカタリバ山内です。
新学期を迎え、東京・高円寺の事務所では
“カタリ場”の授業を準備する大学生ボランティアたちの
声で賑わっています。
宮城県の女川向学館からは、東京と入れ代わりで、
「校庭の桜が咲き始めた」という、
嬉しい知らせが届きました。
こちらから女川向学館ブログがご覧になれます。
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今回の題材は、コラボ・スクールの卒業生が春休み、
東京の支援者をお礼に訪ねた「やくそく旅行」です。
<やくそく旅行の様子>
こちらから約束旅行の様子がご覧になれます。
3月20日の夜、寄付やボランティアなどでご支援頂いた方、
40名近くが集まった活動報告会。
「向学館では、勉強だけでなく、
“人生”を教えてもらいました」
そんな言葉とともに、高校に入ってからの目標を「約束」した、
ある男子生徒の、1年間の足跡をご覧ください。
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「震災の後にいつも心にあったのは、
『自分もいつ死ぬのではないか?』という恐怖感です。」
生徒たち20人が一人ずつ行った、3分間のスピーチ。
その冒頭で男子生徒が放った言葉です。
友達の輪の中心でおどけたり、軽口をたたいたり…
旅行中、彼の陽気な振る舞いを見ていただけに、
私はショックを受けました。
「自分だけが、なんで生き残ってしまったのだろう?」
大人でさえ、そのように考えてしまう方も
数多くいたという震災直後。
そんな周りの暗い雰囲気のなか、
何もかもネガティブに考えるようになり、
「絶望感と悲しみが、積もるばかり」だったそうです。
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女川向学館ができたのは、2011年の7月。
受験生の彼も、向学館に通い始めましたが、初めの頃は、
「勉強する気もなくて、落ち着こうとしてもはかどらなくて、
1時間も机に向かう集中力がありませんでした。」
中学校では、「皆に、勉強が追いついていなかった」という彼。
向学館に日々通うたびに、「わからないところを
隅々まで個別に教えてもらって、勉強する時間が増えていき、
だんだんと、毎日通うのが楽しくなって」いきます。
そのために、大きなプラスとなったのが、
“ボランティアさん”の存在です
「被災地の子どもたちのために、できることをしたい」
と全国から駆けつけくれた方を、コラボ・スクールでは
学習サポーターとして受け入れ、代わる代わる
個別指導などにあたってもらっています。
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たとえば、英語の作文問題を解くとき。
難しく考えて、分からないと空欄で提出したところ、
「簡単な単語をつなげてもいいから、とにかく分かることを
書いていく。そうすれば、何点かはもらえる。
受験勉強でも、あきらめないのが大切!」
そう教えられたのが、彼の心には残っていたり、
勉強の合間、休み時間には、一歩先をいく“先輩”として
高校の部活での失敗談など、聞かせてもらったり。
「生きてて、何の意味があるんだ?」
という震災以来の悩みにも、
「楽しいと思えれば、それは生きている証。
逆に、生きてる意味を探してみたら?」
ともらったアドバイスに、吹っ切れたそう。
こんな風に、向学館では勉強だけでなく、
「生きる意味、勉強の楽しさや必要性など、勉強以外に大切なこと」
「人生について、たくさん教えてもらった」と語ります。
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「幸せになるのが、震災後に生きている意味じゃないか。
亡くなった方の代わりに、強く生きていく義務がある」
親御さんからかけてもらった言葉にも励まされ、
だんだんと前向きに、勉強に、そして人生へと
向き合うようになっていきます。
女川向学館で出会った仲間と
切磋琢磨しあい勉強しながら、
「今を生きることが楽しい」
そう思えるようになっていくなか、
季節は秋・冬と過ぎ、3月に臨んだ高校入試。結果は・・・
「全員合格!」
向学館の中学3年生、37名全員で、第一志望校に合格できました。
“進学”という人生で最初の岐路に立つ年に、
震災で多くを失った彼らも、自分の人生を切り開く
チャンスを、無事つかむことができました。
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そんな卒業生たちが、支えてくださった方々に
感謝を伝えた4日間の「やくそく旅行」。
支援者向け報告会で、彼が力強く語ってくれた
“約束”を最後に紹介します。
「高校に行って僕がやりたいことは、
リーダーになって、皆が楽しく過ごせるクラスを
つくることです。
中学では、友達関係がうまくいってないことがあって、
僕はいつも悩んでいました
ある日ボランティアの人に、そのことを打ち明けたら
『○○(名前)がリーダーになって、改善していけたら、
いい方向に導いていったらいいんじゃないかな?』
と言ってもらいました。」
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“派閥”とかなく、誰もが気軽に話しかけられて、
楽しいと言える高校生活を送ってもらうため、
「高校になったら生徒会長になりたい」と夢を語る彼。
そのことを、やくそく旅行である企業のリーダーの方に
話したところ、アドバイスをもらいました。
「会長になってゴールではなく、
『会長になって何をするか?』がゴールだと言ってくれました。
軽い気持ちで考えていた会長というのを、
本気で目指すことに決めました。
このやくそく旅行は、本当に来てよかったです。」
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女川向学館は、彼ら中学3年生が卒業してから、
3月下旬には新年度の授業をスタート。
約190人の生徒たちが、学んでいます。
大槌臨学舎も中学2・3年生を対象に、
5月からの再始動に向けて準備中です。
これから始まる長い道のりを、彼らが自分の足で
歩んでいけるよう、コラボ・スクールは伴走していきます。
末永く応援のほど、よろしくお願いいたします!
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<編集後記>
このメルマガ、3月にお送りしてから、
しばらくお休みしてしまっておりましたが、
あっという間に新年度、そして5月へ。
5月26日(土)には、「総会・事業報告会」を
例年どおり開催します。
ご支援いただいている皆様に、
カタリバにとって激動だった2011年度を報告し、
“これから”を議論できる場にしたいと考えています。
サポーター(正会員・賛助会員など継続的にご寄付頂いている方 詳細はこちらをご覧ください。)
にはGW前にご案内をしてまいりますので、
サポーターの方は、お手元のメールを
ご確認いただければ幸いです!