【メルマガ】友達同士で頑張っているのを、応援しあえるクラスに
こんにちは、NPOカタリバ山内です。
本日は冒頭から本題へ。カタリバは被災地で、
放課後学校「コラボ・スクール」を運営しています。
http://www.collabo-school.net
これまでメルマガでは、頑張る生徒さんに焦点をあてて
レポートしてきましたが、震災があったからといって、
そこに通うのは普通の子どもたち。
中学生となると、友達や家庭など悩みも出てくるし、
「勉強を頑張るのは、ダサい」「授業中でもはしゃぐのが
カッコいい」といった思春期特有の空気が
生まれてしまうこともあります。
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女川向学館で、特に元気の良い子どもたちが集まった、
あるクラス。そのクラスが、授業中の“おしゃべり”で
収集がつかなくなったときがありました。
今回話を聞いたのは、そんな“荒れた”クラスにサポートで
入っていた、カタリバ代表理事(女川向学館の校長)の今村久美。
彼女が緊張しながら教壇に立ったのは、今年1月のことでした。
■
「このクラスは、今いい状態じゃないと思う」
今村が発した言葉に、それまではザワザワしていたクラスが
シーンと静まり返りました。
「前回の授業、私もこの場にいたけど、支えてくれている人たちに
正直、見せられないと思ったんだ」
授業が始まっても、おしゃべりのザワザワが
止まらないこのクラス。
みんなで勉強しているときも、お菓子を散らかす子や、
勉強しようとしている人の邪魔をする生徒、なかには、
授業が始まっても、ケータイで音楽を聞き続けたり、
先生にゴミ捨てに行かせる生徒もいるくらい。
“自由”という名の無法地帯になりかけていました。
■
宮城県女川町では、多くの子どもたちは狭い仮設住宅
などで暮らしています。
たくさんの家が津波で流され、11あった学習塾も
1つを残してすべてなくなってしまいました。
「勉強したいけど、そのための場所がない」
そんな子どもたちのために設立したのが、女川向学館です。
http://www.collabo-school.net/?page_id=13
避難所として使われていた小学校を教室として借りて、
町や教育委員会とも連携しながら、失業した元塾講師など
地元の住民の方々を雇用。
地域みんなで創り上げる“コラボ・スクール”という
理念を掲げたものの、運営を担う私たちカタリバは設立当時、
「学校経営」という面では“素人”に近い状態でした。
■
「正直、子どもたちを強く叱るべきか、迷っていた」
今村は話します。
「被災地の子どもたち」といっても、普通の中学生。
震災があっても子どもは素朴だから、甘やかせば甘えるし、
厳しく言わなければいけないときもある。
一方、向学館には、震災で傷ついた子どもたちの心をケアする、
彼らの“居場所”という機能もあります。
震災後は、放課後に学校に残って、部活をしたり、
友達とおしゃべりをしたりも満足にできない・・
そんな子どもたちを厳しく叱った方がよいのか?
葛藤もあったそうです。
■
それでも、頑張ってくれている生徒を我慢させたくない。
かといって、勉強のできない生徒を初めから排除して、
「優秀な子だけを集めました」というクラスにはしたくない…
子どもたちのその様子が、何かのサインにも見えた今村は、
3つの“ルール”を全員の前で提案しました。
1.向学館にいる時間は、勉強に集中しましょう
2.友達が頑張ろうとしているのを、応援しあいましょう
3.沢山の人たちに支えられていることに、感謝の気持ちをもちましょう
はじめは、 今村が教壇に立つと、
「『なんなんすか、この人?』みたいな視線」を向けた生徒たち。
荒れた学園ドラマのように、おしゃべりを続けていた彼らに、
今村が語りかけていきます。
■
「向学館は、どうやって成り立っているか。皆は知ってるかな?
たくさんの人たちが、自分の生活のために使うお金を、
寄付してくれています。だから、みんなは勉強できているんだよ
ここにいるスタッフも、皆ががんばろうと思ってくれる
と信じて、応援し続けているんだよ。
今は勉強をする時間。みんながここいにいるのは、
勉強するためなんだよね?
もしみんなが、勉強をがんばるつもりがないなら、
お互い時間の無駄はやめよう。
遊びたいんなら、遊べばいい。
私が中学生だったら、大人からいろいろと言われるのはイヤだし」
冒頭の言葉もあって静まってきたクラスに、今村は続けます。
■
「このクラスのみんなのことを、学校の先生から聞きました。
○○はバスケ部のキャプテンなんだね。
マラソン大会で○○は優勝したらしいじゃん。
○○はテニス部でリーダーシップ発揮しているんだね。
みんなのことはまだ分からないけど、他のスタッフや
学校の先生に聞いて、みんながすごい力をもっていることを、
今日教えてもらったよ」
そのうえで、「友達同士で頑張っているのを応援しあえる」
そんなクラスにしたいと伝えます。
「私は立場を表明するけど、皆はどうする?
この場がもういいと思ったら、帰っていいよ。
今日の授業を受けて、納得できないなら、
もうこのクラスにはこないでいいんだ。
もし1人も残らなければ、クラスも閉めるし、
でも1人でも勉強したいという子どもがいれば、
このクラスは続けるから。その人のために、私は付き合うから」
■
そんな風に、ある意味「突き放して」終えた木曜日の授業。
次の週の授業に、子どもたちは本当に来てくれるのか?
恐る恐る教室に入ったところ、その場にいた生徒は半分くらい。
「残り半分はやめてしまったのか?」
そうがっかりしかけたところ、ちょうどその日は、
学校でインフルエンザのため学級閉鎖になったそうで、
その影響を受けた生徒以外は全員が出席。
そして1週間後には・・・
クラス全員が戻って来ていました!
「みんな、今日来たってことは、続けるってことでいいのかな?」
そう今村が問いかけると、皆が「はい」という返事。
なかには、恥ずかしそうに頷く生徒さんもいましたが、
皆のやる気を確認できたということで、ひとまず安心でした。
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「結局、子どもたちは見透かしていると思うんです」
今村は言います。
生徒たちが気にするのは、
“自分だけが頑張っていると、カッコ悪い”
という思春期特有の価値観です。
そして、「そんな空気が態度にも出てしまうのは、
“勉強についていけない”“わからない”という
サインではなかったのか」今村は続けます。
だから大事なのは、勉強をしていても、皆にからかわれない空間。
前向きに頑張ることを許容してくれる場づくり。
「そんな居場所をつくるのが、私たち大人の役割」なのです。
「これまでは学校に伺って、1回1回の授業をしてきたけど、
自分で学校を運営して、クラスを持って毎週授業をする中で、
先生方の本当のご苦労を、初めて理解できたような気がする」
“非日常”のキャリア教育だけでなく、“日常”の学習指導も
行うことで、今村に生まれた気づきです。
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この原稿を書いて校正をしていたその間に、
今村から嬉しいニュースを聞かされました。
このクラスの生徒の一部は、授業がない日にも
自習室に通うようになったそうです。
これまでの一斉講義形式から、プリントを使って
自分のペースで学習できるようにしたところ、
わからない点をそのまま残さずに、一つひとつ
進んでいけるようになったからでは、とのこと。
進路選択という目標に向けて、子どもたちの主体性を
引き出しつつ、基礎学力を身に着けてもらう。
そのための試行錯誤を、コラボ・スクールでは続けていきます。
【被災地の子どもたちのために、できること】
“津波で家や塾を流された子どもたちに、学びの場を”
「震災があったから、夢をあきらめた」
子どもたちに、こうした想いを抱かせないために…
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http://www.collabo-school.net/?page_id=26
> > > Web更新ニュース
・女川町での職場体験など、文部科学省により採択されました
http://www.katariba.net/k-news/9918.html
・大槌臨学舎で開校式をレポートしました
http://www.collabo-school.net/?p=1636
・日本経済新聞で、「オトナカフェ」が取り上げられました
http://www.katariba.net/k-news/9690.html
・カタリ場のキャスト(ボランティア)を募集しています
http://www.katariba.net/casts
・Asahi Japan Watchで、「カタリ場」が掲載されました
http://ajw.asahi.com/article/behind_news/social_affairs/AJ201202080026
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<編集後記>
寒さが続いていますが、元気でお過ごしですか??
私は軽い風邪を引いてしまいました…
皆さまは、ご自愛くださいませ!
本文で紹介した被災地といえば、Facebookの
タイムラインで昨日見かけたのが、
「世界報道写真コンテスト」の記事です。
ぐっときてしまいました。。
よろしければご覧になってください!
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【発行元】特定非営利活動法人 NPOカタリバ
http://www.katariba.net/
【文責】 山内 悠太
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