【メルマガ】被災地の受験生たちの冬
※11月22日に配信したメルマガを記載させていただきます
こんにちは、NPOカタリバ山内です。
すっかり冬に一足突っ込んでしまったようで、
だんだんと朝夕の冷え込みが厳しくなっていますね。
カタリバでは、宮城県女川町で“被災地の放課後学校”
女川向学館/コラボ・スクールを今年7月に開校しましたが、
こちらの冬はもっと寒いそうです。
現地スタッフによると、「朝、窓を開けると、一面霜で真っ白」
生徒たちは、上着を着込み、膝掛けをして、
ホッカイロを手にしながら授業を受けています。
さて、先月に私も初めてこの女川町に行ってまいりました。
今回のメルマガでは、そこで会った子どもたちの様子を
レポートしますね。
【女川向学館については、こちらの映像をご覧ください】
「学びたい子どもたちに、学びの場を。」 (約1分)
http://www.collabo-school.net/?page_id=803
■
すっかり日も暮れた18時から始まった、中学生の授業。
英語や数学など、学年に分かれてスクール形式の講義が
進むなか、平行して行われるのが個別指導です。
私は、中学3年生の女の子の個別指導を
担当させてもらいました。
その日のテーマは“平方完成”。
y=x2-4x+3
上のような練習問題を解くなかで、分からなかった箇所を
教えながら、一緒にテキストを進めていきました。
あと半年を切った高校受験に向けて、熱心に机に向かう彼女。
つまづきながらも、時折「分かった!」と嬉しそうな
顔を見せてくれたのが心に残っています。
■
彼女は決して、「勉強ができる」生徒ではありません。
集団での授業にはついていけず、
この個別指導クラスで補修を受けているくらい。
それなのに翌日、文化祭があった土曜日。
びっくりしたのは、ヘトヘトのはずのこの日も
自習室に来て、勉強していたことです。
彼女は受験生。追い込みに入るこの時期、
勉強に熱が入るのも当たり前かもしれません。
でも、この女川向学館に2日間いて、
生徒たちの熱心な学習ぶりから感じられた、
この「勉強したい」という気持ち。
その背後には、「勉強したくてもできなかった」
体験があったのかな、と思いました。
■
沿岸部の建物の多くが津波に流された女川町。
もちろん、震災直後は勉強などできる状況では
ありませんでした。
避難所暮らしを強いられた子どもたちも多くいましたし、
学校も3月中は休校。
津波で流されなかった家でも、
「子どもは、水の配給車がこないかを見張って、水を汲む役割」
など日々の生活で精一杯だったそうです。
震災前に、中学生の平均で1日96分は
学校外での学習時間(平日)をとれていましたが、
4月には、57分と半分近くに落ち込みました。
■
中学3年生にとって、夏は受験の天王山。
被害の激しかった地域も、軽かった地域も関係なく
受験競争は訪れます。
「震災があったから、夢をあきらめた」
「志望校に行けなかった」
このような想いは絶対抱いてほしくない!と
私たちが立ち上げたのが、コラボ・スクールです
開校後の8月には、学校外学習の時間は2時間35分と、
震災直後の約3倍にアップ。
「学んだことを無駄にしないように毎日がんばります。」
「いつになるかわかりませんが、何かの形で恩返しできたらと思います。」
といった声とともに、83%の生徒が「今後も通いたい」と
答えてくれるなど、私たちは手ごたえを感じています。
■
最終日、女川第一中学校の文化祭を
見学させてもらいました。
英語での弁論を行った生徒さんのスピーチが
印象に残ったので、最後に紹介させてもらいますね。
(※英語なので、訳の正確さはご容赦ください!)
> > >
「私は小さな頃から、お花屋さんになりたいと思っていました。
大好きだったおばあちゃんが、お花が好きだったからです。
図鑑を見たり、本を読んだりしながら、花についてたくさん調べました。
去年、夢だったお花屋さんで3日間の職場体験をしました。
思っていたようなキレイな仕事だけではない、汚いこと、
辛いこともたくさんあることがわかりました。
だけどお店の人は、お客さんに笑って対応していました。
自分だけ笑顔で仕事をできていないことに気づきました。」
■
「3月11日。おばあちゃんは津波で亡くなりました。
とても悲しい気持ちでいっぱいです。
でも、おばあちゃんがいなくなった今だからこそ、
お花屋さんになって、お花が何もなくなった女川を
花でいっぱいの女川にしたいと思っています。
震災で何もなくなったけど、お葬式に行く大人たちが、
『せめてお花だけでも』と、お花を持っていく姿をよく見ます。
お花の力はすごい。寂しい仏壇も華やかになります。
女川町にもう一度花を咲かせたいと思って、
震災後、花の種を植える活動をしています。
これからも頑張りたいです。」
> > >
秋の文化祭が終わり、3年生は本格的な受験モードに。
冬が深まるにつれて、女川町は朝夕の冷え込みが
厳しくなっていますが、子どもたちは熱をもって勉強に励んでいます。
現地のスタッフたち、ボランティアに訪れる方々たちが、
彼らを精一杯サポートしています。
【募集】ストーブ灯油寄付
東北の寒い冬も、暖かい教室で学べるように。
年末までストーブ灯油のための寄付を募集しています。
震災後、初めて迎える冬。
中学3年生にとっては勝負のこの時期、
子どもたちが 集中して勉強に打ち込めるように。
ぜひ、ご支援をお願いいたします。
[お申し込み] http://www.collabo-school.net/?page_id=1010
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【発行元】特定非営利活動法人 NPOカタリバ
http://www.katariba.net/
【文責】 山内 悠太
- サポーターとしてのご支援ください -
あなたからの月1000円で、10人の高校生に
カタリバの授業を届けられます。
http://www.katariba.net/heart/
※本メールは、NPOカタリバのメルマガにご登録いただいた方、
会員の皆様、職員と名刺交換させて頂いた方にお送りしています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━